焼きたて最高!2種類のハチャプリ
皆さま「ハチャプリ(ხაჭაპური)」ってご存じでしょうか。ハチャプリはコーカサス地方、ジョージア(旧名グルジア)の国民食。チーズたっぷりのパンでございます。数年前、ジョージアを旅した時に食べて感動しました。今回はその作り方をご紹介します。
普段は「手抜きの女王」ですが、今回に限っては「本気の女王」寄りかもしれません。日本の食材で作れるレシピに魔改造しておりますので、ご自宅でパンを作られる方、ぜひお試しください。
パン生地の配合はこんな感じ
パンの生地はごくスタンダードな、ロールパンや塩パンに使うもので結構です。小麦粉は2種類で200g使いましたが、丸型より船型の方がたくさん生地を使用します。丸型90g、船型110gくらいのバランスだと思ってください。
- 強力粉(春よ恋)……200g
- 砂糖(きび糖)……9g
- 塩……3g
- イースト(赤サフセミドライ)……3g
- バター(無塩)……10g
- 水……130g
こね方がどうとか発酵がどうとかは、皆さんご存じだと思うので省きます。ただしイーストに関しては、女王はいつも冷蔵発酵させるので1g強で作ってます。ここではストレートでお作りになる標準量を入れておりますので、とりあえずの参考程度にご覧になってください。
1次発酵終わったら分割します
無事に生地がぷくぷくと育って、フィンガーテストもOKになりましたら、軽く打ち粉をしたこね台に出し、手のひらでそっとプッシュしてガス抜きしておきます。
そしてこれを上記↑のように90対110くらいの微妙なバランスで分割します。「アタシは同じのを2個作るわ!」という方は、きっちり半々で大丈夫です。そして濡れ布巾をかぶせて20分間ベンチタイム~♪
中身に詰めるチーズをブレンド
生地を休ませている間に、中身を仕込みましょう。ジョージアにはたくさんの種類のチーズがあり、地方によってハチャプリに使うチーズも色々です。しかし、ここはニッポン。スーパーにあるチーズで現地で最もスタンダードな「スルグニ」というチーズに近づけるため、ブレンドを行いました。
シュレッドタイプのモツァレラ1袋(150~200g)と、クリームチーズ100gをゴムベラでぐわ~っと混ぜます。クリームチーズは室温でやわらかくしておくと混ぜやすいです。
たまごサラダみたいになっちゃいました。「2個分の量としては多すぎない?」と思われるでしょうが、ハチャプリとはそういう食べ物です(笑)なにしろ現地の言葉で「ハチョ」はチーズ(プリはパン)なので、これでもかと詰め込みます。
最も多く見かける「イメレティ」
かんたんな方から行きましょう。おそらくジョージアで最も多く見かけるタイプがこの丸型の「イメレティ」です。丸いパンの中にがっつりチーズを入れて、フライパンで焼きます。オーブンのない方、ちゃちゃっと作りたい方にも向いていると思います。
包み方は「寄せ」スタイルで
包み方は、広げたパン生地でチーズを包む方式です。まずはパン生地を手でプッシュし、めん棒で丸く広げていきます。できましたら縁が薄く、真ん中は厚めがよいです。
ある程度広がりましたら、真ん中にチーズをどっさり。さっき作ったミックスチーズの半分ほどが入りました。縁にチーズがつかないよう気を付けてください。あとで包むときにくっつかなくなります。
縁の対角線となる二か所を、まずはつなぎ合わせます。指先でむにむにするとパン生地同士がくっつくので、最初にこの状態で固定させます。
次にさっきと90度を成す対角線を、いまつないだ箇所に、ぐーっと引っ張りながらくっつけます。反対側も同じように。そして隙間が空いている箇所の生地を引っ張って、中央のつなぎ部分に寄せ集めます。全員集合です。
裏側に全部寄せ集めてボコボコになっているのを、指先でちまちまとつまみつつ、平面にならしていきます。手のひらで押さえ、隙間があればつまんでくっつけ、だんだんつるっとなってきますので、ていねいに。
すき間なくつながりました。そしたら、ここで無情のめん棒プッシュ。せっかく丸くかわいくなったところを、ひらべったくします。このとき、転がしてしまうと破れやすいので、何か所にも分けて「押す」感じで圧をかけていきます。
はい、かなり平ったくなりました。これで上手に火が通ります。フライパンで焼くので、平たくしないとこんがりしないし火が中まで行きわたりません。。最後に手で円形に輪郭を整えたら成型おわりです。
フライパンでこんがり焼きます
熱したフライパンにサラダ油を敷いて、ハチャプリをひらりと入れます。鉄板に生地が当たるよう、軽くフライ返しで押さえてくっつけてください。中火でこのような色になるまで、蓋をして焼きます。最後は蓋を外してカリッとさせてください。
焼き上がりました。食べてみましょう。もう、ナイフを入れた瞬間に感動です。表面はカリカリ、内側はチーズがとろとろ。ナイフとフォークじゃないとやけどします。成型した状態で冷凍し、解凍して焼いても美味しいですよ。
船の形がかわいい「アジャルリ」
二つ目は、船の形のアジャルリ。黒海近辺、アジャリア地方で食べられるハチャプリです。ガイドブックで見かけるのは、これが多いんじゃないでしょうか。トルコの「ピデ」にも似てますね。地続きなので、文化に関連がありそうな気がします。
独特の形は「巻いて」作る
独特の船型、成形は少し難しいです。初心者さんは丸い方からの方がいいかもしれません。まずは薄く、ピザ生地みたいにめん棒で伸ばします。正円に近い、きれいな丸を意識しましょう。
円形にのばしたら、縁にチーズをのせます。写真を見てもらったらわかりますが、サイドに当たる部分には何も置きません。真ん中あたりだけです。これを芯にしてくるくると内側に巻き込みます。
こんな感じですね。まだ端の方は触りません。巻いた部分が船の深さになりますので、だらけないよう、しっかり立ち上がる感じで巻き込んでください。
そしてここから、端の部分をつなげていきます。両端がとがるように、上手に内側に巻いてください。ここらはパンの生地を扱いなれていないと難しいかもしれません。
天板に乗せて具を詰めます
ここからは天板へ。形が崩れやすいので、慎重に持ち上げて移動させてください。クリアファイルのような薄い板を使うとうまくいきます。ない場合は底をヘラではがして、そっと持ち上げます。
ドリールを塗ってチーズを詰めて
天板に乗せたら、もう一度しっかりと形を整えます。特に船のエッジの立ち上がりはしっかりと。ここがだらりとしていると、焼いたときにチーズが漏れてしまいます。形が決まったら、ドリール(溶き卵)を塗ってツヤを出します。
チーズを詰めます。少し真ん中が高くなる感じで。けっこうな量が入ります。今日だけはカロリーを忘れてウェーイ、です。
ここで二次発酵。ぽっちゃりして柔らかくなるので、しつこいですが再び形をチェック。たるんでいたら、濡らしたゴムべらなどで縁をしっかり立たせてください。
卵は焼き上がる5分前に
さあ、いよいよ焼いていきます。基本、220~230度で15分なのですが、10分焼いたところで、取り出して卵を加えます。この時、ほぼ黄身だけを使用しますので、女王は残った白身でをドリールとして使います。ツヤはいまいちですけど、パンの生地がしっかり焼き上がります。
卵の作業は超スピードで
こちら10分焼いたところです。卵の黄身+わずかな白身を落として5分追加で焼きますが、そのまま卵を落とすと黄身が真ん中に収まらないので、オーブンから出したハチャプリのチーズにスプーンで凹みを作り、そこに卵をインします。この作業を目にも止まらぬ速さでやっていただき、再びオーブンへ戻してほしいのです。
そして焼き上がったのが、こちら。仕上げにバターをひとかけら落とします。どんだけ濃厚なんだよと思うでしょう?でも、食べてみると意外と重くないんです。
食べるときは周りのパンをちぎって、中身をすくっていただきます。ぜひ熱々のうちに、ハフハフしながら召し上がれ~。